私たち実践行動学研究所は、全世代に渡る生涯学習としてのプログラム提供を目指しています。小学生向けプログラムの完成後、次のステップとして中学生向けプログラムの開発に着手しました。
小学生向けプログラム「心のチカラ」は、参加者にはとても好評で「子どもたちの行動が変わった!」といった感想もいただいていたのですが、決定的に困ったことが2点ありました。
それは、「プログラムの良さや成果を説明しづらい」ということと、「運営が難しそう」というイメージが持たれていたことです。日本では「レジリエンス」という言葉自体の知名度も低く、非認知能力は数値で表すことができないため、効果や成果が非常にお伝えしづらいものとなりました。また、体を動かしたり、感情面を扱ったりすることも多いワークショップに対して「私たちにできるかな…」という指導者からの不安の声も。(実際は研修等でサポートさせていただきますので、心配はご無用です)
そのような経験から、「いくらよいものでも、必要な人に届けられなければ意味がない!!」という思いが生まれ、中学生向けプログラムの開発には「シンプル・フレキシブル・低コスト」の3つの条件を課すことを心に決めました。
さて、開発にあたったとき、改めて「中学生という年代にこそ育んでおきたい資質とは何か?」を考えました。
そこで思い出した、ある生徒の数学の質問に答えたときに言われた一言。
「どう?分かった?」
― 「わたし、バカだから分かんない…」
生徒の中には、新しいことを嬉々として学んでどんどん成果を上げる生徒もいれば、この生徒のように「自分には無理!」と拒絶し、その言葉通り苦手なことをどんどん増やし続ける生徒もいます。
自分自身の可能性に蓋をする「思い込み」を取り払うため、今の日本の中学生には「もっと学んで成長したい」という思いや、「自分もやればできる!」という思いが生まれるきっかけ(場)が必要だと私は考えました。
また、実際にプログラムの制作を進める中で、譲れないものがひとつありました。それが先にも述べた「対話」です。
それは、私自身にも「対話」によって視野が大きく広がり、人生を切り拓くきっかけになったという経験があったからです。
そこで、最終的な教育目標を「成長型マインドセット(=Growth Mindset)」の醸成とし、そのプロセスでの獲得能力の主軸に「主体的に考える力」と「対話する力」を据えることにしました。
開発にあたっては、ワークをシンプルなつくりに統一し、経験の少ない指導者でも安心して運営できるものを目指しました。
一見すると何の変哲もないワークシートですが、生徒たちの様々な知見が溢れ出るものができたと自負しています。
しかし、現段階のプログラム・ユニットは、まだ最終形ではありません。プログラムの本来の目的を達成するためには、内容をさらに追加し進化させることが必要と考えています。