前回は、「相手との関わり方を聞き手がデザインする」ということをお話しました。
今回は、実際に話を聴くときのポイントをお伝えしたいと思います。
『傾聴』の最も重要なポイントを1つだけ挙げるなら、、、
ズバリ、それは『自己管理』です。
人の話を聞いていて、それが興味のある内容だったりすると、ついつい自分のことを話したくなりますよね。
つまり自分にとって関心の高い内容だと、傾聴はしづらくなるんです。
逆に興味のない内容ならどうでしょうか?
内心「興味ないわ~」とか「つまんねぇ~」とかつぶやいたり、いつのまにか違うことを考え始めていたりしませんか?
わたしにはあります、そういうことが。笑
(胸を張って言えます)
あと、ありがちなのが子ども(や部下)に注意を与えなくてはいけないような場面で、相手の話を聴いているようでいて、実は「すみません。以後気をつけます」と謝罪させることが目的になっているパターン。
こういうときは質問が詰問になってしまい、相手は決して話を聴いてもらっているとは感じません。
「結局どんなときも傾聴ってムズカシイんじゃん!」
って思いましたよね?
そうなんです。笑
だから、『自己管理』というスキルが重要なのです。
自己管理には2つのステップがあります。
その第一ステップは、『事前に傾聴する心構えをつくる』ことです。
(また事前の話ですみません。でも、事前準備はほんと大事なんです)
たとえば、「今から15分間は心から相手に寄り添って話を聴くぞ!」と心に決めておく、ということです。
これは、話し手との関係性が近ければ近いほど、強く意識する必要があります。
また、上司・部下のような利害関係がある相手の場合も同様です。
それは、コントロール願望が働くからです。
コントロール願望は、傾聴の天敵です。
だから、話を聴く前に傾聴すると決めておくことが大事なのです。
そして、自己管理の第2のステップは、
『聴いている最中に自分の状態に気づいて、傾聴できていなければ意識を立て直す』ということです。
傾聴は言語傾聴と感情傾聴に分けられますが、人は言葉の内容だけでなく、感情まで受け取ってもらったときに「聴いてもらった」という感覚を味わいます。
だから、傾聴とは話し手の感情まで聴き取ることとも言えますが、人は話を聞いていると反応的に自分の中から湧き出てくる自分自身の言葉を聞くようになります。
・この話はいつまで続くのかなぁ…
・さっきから言い訳ばっかりしてるなぁ…
・何て言ったら説得できるかなぁ…
・どんなアドバイスをしようかなぁ…
こんな言葉が頭の中を巡るようになったら、相手の心の声は聞こえていません。
ここで『自己管理』の出番です!!
自己管理で相手に意識を向け直すのです。
・相手は私に何を分かってほしいと思っているんだろう?
・相手はどんな気持ちで話しているんだろう?
・相手は本当は何を望んでいるのだろう?
こんな感じで、相手を主語にした問いかけを自分にしてみるのが意識を戻すコツです。
頭の中をぐるぐる回り始めるつぶやきから相手の表情や声のトーンに焦点を当て直す、というイメージでやってみてください。
きっと相当難しいことに気づくでしょう。笑
でも、聴き手がその心がけでいる時間が長ければ長いほど、相手は「聴いてもらった」という感覚が強くなります。
『傾聴』は難しいからこそ、コーチングやカウンセリングといった仕事が存在します。
誰にでもできることなら仕事にはなりませんもんね。
どんなに聞き上手な人でも、必ず人の話を聴けない状態になります。
人間とはそういうものです。
聴くことができていない自分の状態に気づき、そこから仕切り直して聴く姿勢に戻す。そしてまた聴けていない状態に落ちたら、意識的に立て直す。
この繰り返しが自己管理の第2段階です。
これこそが『傾聴力』の本質だと思いますし、これを繰り返す経験を積むことでしか、傾聴の筋力をつけることはできません。
はじめはなかなかできなくても、やっていくうちにだんだん相手の気持ちに集中して聴ける時間は長くなっていきます。
傾聴に元手はかからないので、ぜひ挑戦してみてください。
(文:大原)