今日は、時代に合った学校のあり方について、一緒に考えてみましょう。
皆さんご存知の2つの童謡を、まずは歌ってみましょう。
あ、歌詞を読むだけでもいいです。笑
「すずめの学校」
♪ チイチイパッパ チイパッパ
すずめの学校の先生は
むちを振り振り チイパッパ
生徒のすずめは 輪になって
お口をそろえて チイパッパ
まだまだいけない チイパッパ
もいちどいっしょに チイパッパ
チイチイパッパ チイパッパ ♪
(作詞:清水かつら)
「メダカの学校」
♪ メダカの学校は川の中
そーっとのぞいて見てごらん そーっとのぞいて見てごらん
みんなでお遊戯しているよ
メダカの学校のメダカたち
だーれが生徒か先生か だーれが生徒か先生か
みんなで元気にあそんでる
メダカの学校はうれしそう
水にながれてつーいつい 水にながれてつーいつい
みんながそろってつーいつい ♪
(作詞:茶木 滋)
さて、まずは「すずめの学校」の教室風景を想像してみます。
「チーパッパ」というのはすずめの鳴き声のことで、短い歌詞の中に8回も登場してますね。
教室の絶対的な権力者である先生が鞭を振るい、「貴様らの鳴き声はチーパッパだ。全員一斉に鳴いてみろ!」と命令し、子どもたちが声を揃えて「チーパッパ」と鳴く。それを何度も何度も「もう一回!」と繰り返す。
もしもお子さんの授業参観を見に行って、こういう授業を見せられたらどうでしょうか?
ゾッとします、すずめの学校。今の時代なら、すずめ先生は一発アウトです。
一方のメダカの学校、ほのぼのしていて癒されますね。
先生も生徒と区別できないくらい子どもの中に溶け込んで、お遊戯(授業)をしています。日本ではこういう授業になかなかお目にかかれないので、保育園みたいな様子が頭に浮かぶ人も多いと思います。
実は、この2つの歌には、作詞された当時の時代背景が色濃く反映されています。
・「すずめの学校」の作詞は戦前
・昭和20年に終戦
・「めだかの学校」の作詞は昭和25年
戦前の「すずめの学校」は、「チーパッパ」という合い言葉が比喩になっていて、全ての国民がお国のために突き進む『軍国主義』を歌っています。そこで行われた教育は、生徒が自分で考えることを禁じ、上官である先生が唯一の正解を子どもに叩き込むことでした。
一方、戦後に書かれた「メダカの学校」は、子どもの自主性や主体性を重んじる民主主義(自由主義)を象徴しています。全ての日本国民は平等であり、「つーいつい」は悠々自適で平和な暮らしぶりを表しているようですね。
2020年から始まった教育改革の授業改善の柱に「主体的・対話的で深い学び」が据えられていますが、これは昭和の時代から目指していた方向性だったことが読み取れます。
それにしても、すでに時代は令和だというのに、メダカの学校はなかなか実現していません。 \―それもそのはず。
鞭を振るうことこそなくなりましたが、日本の教育システムでは先生が教え込む「すずめの学校」スタイルがずっと続いて来たのですから。
ひとつ言い添えると、メダカの学校はほのぼのとして楽しそうですが、現場の先生にとってはなかなかエグイ側面もあります。
そのポイントは、さらっと歌われている最後の1行。
♪みんながそろってつーいつい♪
これがなかなか難しい!!
生徒の自主性や主体性を重んじる授業で、「みんながそろってつーいつい」になるためには、それ相応の技術やポリシーに根ざした場づくりが必要です。
でも、もし実現したら、先生も生徒も楽しく・深~く学ぶことができる。
それがメダカの学校です。
今の時代、ますますそれができる先生が求められているように思います。
(文:大原)