最近は体験談ばかりだったので、知識やスキルを知りたい方にとっては物足りなかったかもしれません。
今日は久しぶりに、”子どもや部下にどんな言葉をかけたら信頼関係が深まり、自発的なモチベーションが高まるのか?”という心理学のお話です。
まず、次のA群、B群の言葉を見てください。
(A群)
・よくできたね。
・~~するなんてえらいね。
・~~がとても上手だね。
・やればできるじゃない!
・この調子でがんばって!
(B群)
・あなたの努力の成果が表れて私もうれしい!
・~~してくれてありがとう。本当に助かった。
・今回は残念だったけど、次も応援しているよ。
・毎日がんばってるね。何か手伝えることがあったら言ってね!
このA群とB群は、どちらも言われてうれしい言葉ですよね。
でも、ちょっとしたニュアンスの違いがあることに気づきましたか?
A群は、尊敬している人や目上の人から言われるならよいのですが、年下の人や部下から言われたらカチンと来るかもしれません。
私だったら「おまえが言う?」と言いたくなります。
例えば、新入社員が社長に向かって「○○社長もやればできるじゃないですか~」と言ったら、周りは凍りつきます。笑
一方、「○○社長、ありがとうございます。ほんとうに助かりました!」というB群の言葉ならまったく問題ありません。
A群とB群の違いとは何なのでしょうか?
実は、A群はいわゆる「ほめ言葉」で、
B群はアドラー心理学がいうところの「勇気づけの言葉」です。
ニュアンスの違いは次のことから生まれます。
・ほめ言葉は上下の関係(上から目線)で、
勇気づけの言葉は対等な関係(横から目線)
・ほめ言葉は相手を評価する態度で、
勇気づけは相手を受け入れる態度
・ほめ言葉はよくできたときに与えるご褒美、
勇気づけはうまくいってもしくじってもかけてあげられる言葉
アドラー心理学では、「叱ってもほめてもいけない」と言っています。
なぜほめ言葉(A群)がいけないのかというと、ほめてくれる人への依存を生み、やがては「ほめてもらえないならやらない」という態度を生み出すからです。
ほめられること(外発的モチベーション)が目的化して、行動対象そのものへの興味・関心が薄れてしまうのです。
その上、上手くいくかどうか分からないことは避けるようになります。
上手くいけばほめられて、失敗すれば叱られるのであれば、ごく自然な反応といえます。
一方、勇気づけの言葉は心の中の安心を生み出します。
自分は感謝される存在で、応援されている。
そう思うからこそ、のびのびと挑戦できます。
また、内発的モチベーションが高まって、人からの評価を恐れる必要がなくなれば、自発的に動くようになる、というわけです。
おまけに本当の信頼関係を築くには、上下の関係よりも横の関係の方が効果的だとも言われています。
だから、よく「ほめて育てましょう!」と言われますが、ほめ言葉には副作用があることを忘れてはなりません。
そうはいっても、アドラーが言うような”ほめも叱りもしない”なんていう育て方は非現実的だ!という方も多いと思います。
(正直、私も「そりゃムリ!」と思います)
そこで最後に言葉がけのキモを一つだけお伝えすると、注目すべきは“主語”です。
「あなたは~~~だね」と言うと評価的な印象が伝わってしまうので、
「私は~~~だと感じた」のように、私を主語にして言うのがポイントです。
既述のA群は「あなた」が主語、B群は「私」が主語になっていますよね。
【参考】 アドラー流 たった1分で伝わる言い方 /著:戸田 久実、監修:岩井 俊憲 (かんき出版)
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(文:大原)