ワークショップリーダー研修会やプログラム体験会の冒頭で、「対話型の学習をやった経験のある方は?」とお聞きすると、大抵は10人中2~3人程度の割合で、ほぼ全員が初めてということも少なくありません。
今、“主体的、対話的で深い学び”を標榜した教育改革が進んでいますが、先生自身に対話型学習の経験がなくてお困りの方が多いんじゃないかな~?
と思ってしまいます。
対話型学習の実施には、ノウハウはもちろん必要です。
でも、もっと大切なのは、“その学習効果と楽しさを体験的に分かっていること”です。
多くを教えることや分かりやすく教えることに価値を置いている先生が、「ワイワイガヤガヤと話し合うよりも自分の授業を聞かせた方がいい」と思うのは至極当然です。
(私自身、伝達型一斉授業でいかに生徒を楽しませて高い成果を生むか、ということに長い間心血を注いできたので、その気持ちはよ~く分かります)
とはいえ昨今、学校の授業が変わってきているという話もよく聞くので、授業に対話的な学習方法を取り入れている先生が増えてきていることは間違いないようです。
例えば算数の授業で、みんなで考え方を話し合って発表する、だとか。
生徒たちにとっては、ただ聞くだけよりも深く理解できたり、算数が好きになる効果もあるかもしれません。
素晴らしいことです。
これはこれでもちろんアリなのですが、今日は“子どもたちがさらに深く考える力を身につける授業のあり方”を提言してみたいと思います。
それは、「正解のないテーマについて話し合う」ということです。
正解が存在するテーマの話し合いは、正解に沿った発言以外は「間違い」になってしまいます。
これでは本当の意味で自由な思考の交換になりにくく、”考えさせられている感”も出てきます。(無意識かもしれませんが)
それに対し、正解のないテーマの話し合いは、その場でみんなの正解を創っていくというプロセスになります。
思考や発言の自由度が高いので、様々な角度から考えることができますし、抽象度が上がるので、より主体的に考える姿勢が求められます。
出来合いの正解にたどり着く力ではなく、より深く考える力を身につけさせたいなら、正解のないテーマの方が断然効果的です。
前回(第115号)でご紹介した「他人のおにぎり問題」のような新傾向の入試でも大いに効果を発揮するでしょう。
また正解に縛られることがない話し合いは、自己理解や相互理解にも役立ちます。
先日千葉県で指導者向けに行なったカラフル・ドアーズ体験ワークの感想には、こんなコメントがありました。(了承を得て掲載しています)
・スタッフの人柄に気付け、楽しかった
・日頃の殻を破って自由に話せ、楽しかった
・自分が今まで生きてきた中で学んだこと を他人の意見と照らし合わせるよい機会になった
・いつもと違う自分を出せたと思う
・自分を自分たらしめていることに気づかされた
子ども向けに創ったワークですが、深く思考が刺激されるので、大人にも学びが生まれています。
対話型学習には、教育改革の柱「学力3要素」で示された多くのチカラ(思考力、表現力、主体性、協働性、多様性…)を刺激するだけでなく人と人の心をつなぐチームビルディングの効果もあることがお分かりいただけると思います。
対話型学習を体験してみたい方、運営スキルを身につけたい方、ぜひご相談ください。
(文:大原)