たまたま何人かの友人がFacebookで大学の入試問題について書いていたので、今日はその問題を取り上げてみたいと思います。
その問題とは、コレです。まずはご覧ください。(問題の要旨が伝わる範囲で簡略化しました)
あなたは高校の教師である。
ある日、授業の一環として農業の体験授業があり、農家に生徒を連れて出かけた。体験作業の後、農家のおばあさんがクラスの生徒全員におにぎりを握ってくれた。しかし、多くの生徒は他人の握ったおにぎりは食べられないと、たくさん残してしまった。
[問い1]あなたは、おにぎりを食べられない生徒に対し、どのように指導しますか。
[問い2]あなたはこの事実をおばあさんにどのように話しますか?
(2019年 横浜市立大学 医学部医学科の小論文試験_改題、60分間、文字数1,000字)
何とこれが医学部の入試問題?! 注目されるのも無理ありませんね。
多くの方が入試問題として違和感を抱く理由は大きく2つあるんじゃないでしょうか。1つめが「正解はなんなの?」という点、そしてもう1つが「出題意図はなんなの?」という点です。
ネット上にはこんな書き込みがありました。
・模範解答を見てみたい。きっと突っ込みどころ満載www
・医学と関係ないじゃん。この問題作ったヤツ糞
(原文のイメージを壊さないように再現)
こういう意見を見ると、思わず逆突っ込みを入れたくなっちゃいます。
いまどき「模範解答」って、逆に古いんですよ。模範解答のない社会になってるんだから、入試問題もそれに適応したものに変わって当然。
”1つの正解に照らし合わせて合っているかどうか”とは違う手法で学力を測っているんです。
それに、お医者さんに必要な要素満載ですよね?
説明能力(患者さんやスタッフにバランスの感覚ある誠実な対応ができるか?)の他、問題対処能力(突発的に起こった問題にどのように対処するか?)や危機管理能力(衛生上の問題はないのか?そのような問題を解決する枠組みは考えられないか?)などを総合的に問う良問だと思いませんか、と。
まあ、私が書くであろう回答は、「おばあさんに対して感謝の気持ちはないのか?えっ?どうなんだ高校生諸君!!」という感じになっちゃいますが。苦笑
医学を志す学生さんたちは、「食中毒の集団感染やアレルギー体質に対するリスク管理」という視点や、「農作業をすることだけが体験学習なのか?」という学習の本質を問う視点から回答を書くのかも知れません。
ちなみに、ベネッセ教育情報サイト(2018年)のアンケートでは、「お子さまは、どのおにぎりなら食べられますか?」(複数回答)という質問に対し、「他人(知人・友人)が握ったおにぎりを食べられる」と回答した子どもは半数以下(!)だったそうです。
今は、コンビニのおにぎりは食べられるけど母親が素手で握ったおにぎりは食べられないという子もいるらしいです。人が握った物には雑菌があり、衛生管理が行き届いた工場で作られた物は安全という理屈です。
そこまで潔癖なのはいかがなものかと思いますが、そんな私も、農家のおばあさんに口噛み酒を出されたら絶対ムリです。(参照『君の名は。』)
今日は、21世紀型学力を試す入試問題をご紹介させていただきました。
新たに始まる「大学入試共通テスト」が、“社会生活や日常生活の中から課題を発見し、解決方法を構築することや、資料やデータなどをもとに考察することを重視する”という方向性ですから、その先取りをした問題ということになります。
でもよく調べてみると、このような問題はすでに多くの大学で出題されていて、今後ますます増加に拍車がかかるのは確実でしょう。
「社会で求められるスキルが学校で学べない」と言われる日本の教育界にとって歓迎すべきことではないかと、個人的には思います。
他人のおにぎり問題、あなたならどう答えますか?
そして、生徒たちがどう答えるのか、興味が湧きませんか?
教室で試してみてはいかがでしょうか。
(文:大原)