私は、大学を卒業してこの研究所に来るまでの間、長いこと塾の先生という仕事に携わっていました。先生といっても営利企業なので、経営や管理などもいろいろ経験させていただきました。
大学では高分子材料工学というちょっとニッチな学問を専攻していましたが、毎日研究室でひたすら実験に明け暮れる日々(時には酢酸臭の漂う暗室にこもりっきり)に嫌気が差して、大学を出たらモノではなく人を相手にする仕事に就きたいと思ったのが始まりでした。
そして縁あって入社したのが、東京に本社を持つとある進学塾。
当時は飛ぶ鳥を落とす勢いで合格実績を伸ばし、事業拡大の真っ只中だったので、私が通う地方の大学にも求人票が来ていました。
中学受験の“ち”の字も知らなかった私は、「子どもに勉強教えるくらいどうってことないっしょ」という浅はかな考えで入社したので、その後地獄を見ることになります。苦笑
今思えば、そこでの授業はなかなか風変わりなスタイルでした。
・授業中にテキストは使わない。扱うのは先生自身が作成した問題のみ。
・授業では数多くの問題を解こうとはせず、厳選した問題を様々な解法で解けるようになることを目指す。
いわゆる「別解」の探究で思考力を伸ばすという塾でした。
テキストもなければ模範解答もない。
自分で作った問題を黒板に板書し、生徒が考えた解法をピックアップして、他の生徒に理解してもらうための通訳をする。そんな形式の授業でした。
これ、私立中受験の経験がない私にとっては、なかなか熾烈な仕事でした。
そもそも自分で問題を作るなんてことはしたことがない。
工学部出身なので教壇に立ったこともない。
小学何年で何を習うのかも知らないし、もちろん数学を使って解説するのはご法度。
そんな私に子どもが考えた独特な解法の式の意図なんて読み取れるわけがない。
(どのような考え方で答えを導いたのかを説明できない生徒が多いこと!汗汗)
…とまあ、当時の私にとっては二重苦どころではなく、三重苦四重苦五重苦の仕事でした。
私の昔話はこのくらいにして、今日の本題です。
このあいだ、ふと思ったんですよね。
今こそ、「別解力」って大事だなぁ・・・と。
で、あの頃やっていた授業はなかなか先進的だったんじゃないか・・・と。
あの頃の私は分からないことだらけでしたけど、何年か経験を重ねるうちにそれなりにやれるようになり、その後は身につけたパターンの使い回しで仕事が成り立つようにもなりました。
でも今仕事をしていると、誰も正解を知らない問題ばかりが起こるように感じます。
従来のやり方を繰り返すだけでは立ち行かなくなるなぁ…と思うことも多いです。
それがVUCAワールドってことなんでしょうね。
なので、今必要なのは、「他に解決の仕方はないかな?」という発想で自分なりの別解を探求することなんだと思います。
偉そうに言うほどストイックにやってるわけじゃありませんが。。。
子育てであれ外の仕事であれ、みなさんにも別解力を試される機会がたくさんあるのではないでしょうか?
これからの時代を生きる子どもたちには、ぜひ“別解力”を磨いてほしいと思います。
そのためには、私たち大人が古い考えに囚われずに、新たな別解を探す姿を見せることが大事です。
きっと、それができない人が”老害”と呼ばれるようになるんですよね。
気をつけなくては。
いやほんとまじでまじで。。。
あなたは、別解力を磨いていますか?
p.s.
【別解力】という言葉をググってみたら、すでに書籍のタイトルに使われていました。残念ながら私発信の新語にはならず。
(文:大原)